ミュージシャン&映像作家が語る “オーディオ×ビジュアル”の魅力とは?

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プロフィール :

沼澤 尚 Numazawa Takashi
ドラマー。2000年までロサンゼルスに在住し、CHAKA KHAN、SHIELA E.などのツアーをはじめ、数々のアーティストと共演。その後、日本国内でも活動を開始し、数々のアーティストのレコーディングやライブに参加。ブラジルの"PERCPAN"をはじめ、国内では"FUJI ROCK FESTIVAL"、"朝霧JAM"、"RISING SUN"、"METAMORPHOSE"など、多数のフェスティバルにも出演。また、"DEEP COVER"、"THEATRE BROOK"、"blues.the-butcher-590213"をはじめとする数多くのユニットでも活動中。2013年12月には、ナカコー(中村弘二)が全面プロデュースしたソロアルバム、『Entropy Vol.1』をリリース。
http://takashinumazawa.com/

ナカコー(中村弘二) Nakamura Koji
1995年、バンド"スーパーカー"を結成し、2005年解散。その後、ソロプロジェクト"iLL"を立ち上げる。あらゆる音楽ジャンルに精通する可能性を見せ、メロディーメーカーとして確固たる地位を確立しリミキサーとしても遺憾なくその才能を発揮している。2011年バンド"LAMA"を結成。2012年"MECABIOtH"を始動。同時に主宰レーベル"Sound Of Romances"。現在は"Koji Nakamura"名義としても活動中。 また、2014年4月には自身の集大成プロジェクトKoji Nakamuraを始動させ「Masterpeace」をリリース。東名阪でワンマンライブを行った。キャリアを重ねつつも進化し続けるナカコーを示唆するライブとなった。
http://nakamurakoji.jp

フルカワミキ Furukawa Miki
1995年、本人のバンド募集の張り紙をきっかけに"スーパーカー"を結成。1997年にメジャーデビュー。ベース&ボーカルとして、そのプレイや存在感は比類無きものとして評価される。また、自身のバンドだけに留まらず多くのアーティストの作品に参加。2011年には、ナカコーらとともにバンド"LAMA"を結成。また、近年ではベーシストらしいリズムやエッジがたったDJとしても着目されている。2014年自身の初の宅録アルバム「Moshi Moshi,Kikoemasuka?」をリリース。新たなフェイズへ向かう作品となった。最近ではGAGAKIRIZEの吉澤幸男をサポートに迎え2人編成のライブもスタートさせている。fuZe Vol.2"にはDJとして出演。
http://furukawamiki.jp

山田秀人(ヤマダヒデト) Yamada Hideto
fuZeの発起人であり、メディアクリエイター。楽曲と同期したコンセプチュアルな映像表現で、過去に日本のファンクロックバンド"Theatre Brook"や、ダンスミュージックユニット"SUN PAULO"のライブビジュアルを手掛けるなど、ライブパフォーマンスとしてのビジュアルプロジェクションを行う。また、映像のみにとどまらず、ゲーム、WEB、アプリなどさまざまなメディアで活躍中。2013年12月に開催されたイベント"fuZe Vol.2"では、fuZeのために開発されたVJソフト"vjkit(powered by Unity)"でビジュアルパフォーマンスを行った。LiveALife inc.代表。
http://livealife.co.jp

2015.2.23



●まだまだ技術的な課題もあると思いますか?

フルカワ:テクノロジーがもっと簡単にならないのかな、というのはすごくよく分かります。ひとつの音楽のカタチが、レコーディングの時とライブの時で変わるのと同じで、映像もどこで見るかで、すごく変化があるものですよね。

だからこそ、思い立ったときにすぐに映像を記録・再生・編集ができるように、もっと簡単になってほしいです。

それでも、以前と比べればずいぶん簡単になりましたよね。10年前だとレンダリングにかなり時間が掛かりましたからね。

ヤマダ:そうなんですよ。映像は撮影・編集している時間よりも、レンダリングを待つ時間の方が長いくらいでしたから。

しかも、レンダリングが終わって映像を確認してみたらイメージやタイミングが違ったりして、そこからまた修正してレンダリングし直すのにさらに半日かかったりとか(笑)。

沼澤:たとえば、映像を修正してもらいたいときに、「これ、こういう風にしたいんだけど」と言っても、「それ、できないんですよ」って言われることも多くないですか? 「いまのタイミングでは無理です」ということが、ボクみたいな映像の素人には分からなくて。

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ヤマダ:そう。映像って情報量が多いんですよ。だからコントロールしていくのがすごく大変なんです。

それこそ15年前にCGを作っていた時なんて、10秒くらいの映像をレンダリングするのに、コミックを一冊読めるくらいの時間がかかっていましたから。
でも、いまはもうリアルタイムで動きますし、3Dの映画を撮る時でも、役者がモーションキャプチャーを使って演技した映像が、その場でレンダリングされてモニターに映し出されたりしますよ。

沼澤:なるほど。プレビューするまでにあまりいろんなプロセスも時間も掛からなくて見られるんだ。それっていいの? やっぱりいいんだよね?

ヤマダ:いいんだと思います。コンピューターでビジュアルを作る場合は、タイムラグがなければないほどパフォーマンスの自由度が上がるのは間違いないので、そういう意味では、クリエイターやアーティスト、パフォーマーにとってはすごくいい時代が来たんだと思います

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●とはいえ、技術が進化してプロセスが短縮できるようになった反面、それによって失われているモノもありそうですよね?

沼澤:うん、そう思います。むかしの音楽の現場だと、待ち時間ができたときは、することがあったんですよね。

たとえばレコーディングだと、むかしはアナログテープを使っていて、1曲録り終えて次の曲にいくときに、テープを変えてもう1回レコーディングできるようにセッティングするのに時間が掛かるじゃない。

その間にボクらはコーヒーとかを飲んで、気持ちを切り替えて次の曲にいく、っていう流れが良かったんだよ。

それがいまだとめちゃくちゃ早い(笑)。待ち時間がほとんどなくて、気持ちを切り替えるどころかトイレに行くヒマもないくらい。テクノロジーが進化しているのはいいんだけど、けっきょく扱っているのは人間だから、人間がクリエイトするときのそういう時間って大切だと思うんだよね。

●沼澤さんはそういう部分を大切にしているということですね?

沼澤:そうですね。ボクは、3D映画をたくさん観に行くんだけど、それを作っている人の気持ちや想いが、出ているものと出てないものがありますね。

テクノロジーがすごく進化しているせいで何でもできるようになったんだけど、作るのはやっぱり人間なので、人によってすごく違いが出るんですよね。

すごい迫力のある映像だけど「これ面白くないな」っていうのもあるし、3Dの使い方が上手くて「これは良くできているな」と思ったり。

また、人間の気持ちに響いてくるものとそうでないもの。その差がテクノロジーの進化によって届かなくなってしまうのではないか、と思ったりもしますね。

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ボクはドラマーで、太鼓を叩いて演奏しています。太鼓ってそもそも人と人が声の届かない距離を交信するために使っていた道具で、いま自分がやっていることも、それと何も変わってないな、と思って演奏しているんですよ。

たとえ、生み出す音が機械的なものでも、使っているのが人間だということを表現できた方がいいと思っています。

そこで思うのは、テクノロジーが進化することによって便利にはなるんだろうけれども、制作時における気持ちの切り替えとか、曲に入っていくときの感情的なものが、これまで以上に損なわれる時もあるんだろうな、ということです。

●何でも自由になりすぎると、失われるものってやっぱりあるんでしょうか?

ヤマダ:きっと音楽もそうだと思うんですけど、制限とか制約とかがあると、それがクリエイティブに繋がったりもしますよね。

映像の場合というかボクの場合は、初めに「こういうのオモシロいかも」といったディテールがあって、そこを制約にして作りはじめることが多いんですけど、音楽の場合は、結構リアルにディテールが浮かんでから作りはじめることもあれば、徐々に組み上げながら考えながら作る場合もありますよね?

ナカコー:ボクの場合は、スタートが限定されているものの方がアイデアが沸きますね。そこから膨らませていくために、こういう機材が必要だとか、こういう技術が必要だとか、もっと大きくなるとこの人が必要だとか、そういう風に物事を膨らませながら作曲していく方が多いですね。

INFORMATION :

■沼澤尚ライブ情報  
2015年2月26日(木) 『"THE UNION" by THEATRE BROOK&blues.the-butcher-590213』 横浜 THUMBS UP  
出演: シアターブルック&ブルーズ・ザ・ブッチャー 永井ホトケ隆+佐藤タイジ+沼澤尚+中條卓 +エマーソン北村+KOTEZ  
詳しくはこちら   
 
2015年2月27日(金) 『blues.the-butcher-590213』 高円寺 JIROKICHI  
出演: 永井ホトケ隆、沼澤尚、中條卓、KOTEZ   
詳しくはこちら  
 
2015年3月1日(日) 『enda safari Vol.1〜辻コースケ+沼澤尚+内田直之』 元住吉 POWERS2  
出演:辻コースケ、沼澤尚、内田直之  
詳しくはこちら  
 
オフィシャルサイト takashinumazawa.com  

■フルカワミキ、ナカコーが所属する「LAMA」ライブ情報  
2015年3月27日(金) 『HITSUJI meets clubasia19th Anniversary』 渋谷 clubasia  
出演: LAMA、石野卓球 他  
詳しくはこちら  
 
その他ナカコーのライブ情報はこちら