fuZe

●沼澤尚×ナカコー＋ヤマダヒデトというユニットは fuZe Vol. 2 のために特別に結成されたユニットなんですね。そもそもそのきっかけは何だったんですか？

ヤマダ：たしか2013年の春ごろ……４月か５月あたりだったと思うのですが、沼澤さんから、｢じつは今度、ナカコーのプロデュースで自分のソロCDを出すんだよ｣という話を伺いまして、その制作途中のアルバム『Entropy Vol.1』をクルマのなかで聞かせていただいたんですよ。

沼澤：そうそう、ちょうどその日は、『Entropy Vol.1』に収録する曲を全曲収録し終えたばかりだったんだよね。自分のクルマのなかで聞きたくて、たまたま曲データを持っていたので、それをヤマダくんに聞かせたんです。

そうしたら、ボクがクルマにガソリンを入れているあいだに、ヤマダくんがそのうちの１曲を聞き終えて、なにかをひらめいたらしく、｢沼澤さん、この曲で何か一緒にやりませんか！｣って言われたんですよ。

●それがきっかけだったんですね。

ヤマダ：ええ、そうです。ボクは以前から沼澤さんに、｢沼澤さんのソロ(ドラム)ライブを見たい｣と言っていたんですけど、『Entropy Vol.1』の曲を聞かせていただいた時に、｢これだ！｣と思ったんです。ナカコーさんが作ったトラックの上に、沼澤さんのソロドラムがすごいカタチでのっかっていて、単純に美しいと思ったんです！


●ヤマダさんはVJとして沼澤さんと長年共演されているんですよね。

ヤマダ：はい、ボクはVJとしても、沼澤さんとはここ13年ほど、さまざまなプロジェクトで共演させていただいていました。

これまでは、まえもって作りこんだVJ(映像)素材を、その時の曲と雰囲気とビートに合わせて展開していくという方法で、”インタラクティブなプロモーションビデオ”という感じだったのですが、このVJのやり方にはいろいろともどかしい部分があったんです。

沼澤さんに『Entropy Vol.1』を聞かせてもらったときのボクは、ちょうど”fuZe Vol.1″が終わった直後で、リアルタイムに演奏からビジュアルを生成できることが見えてきた時期でした。

クルマのなかで曲を聞いているうちにビジュアルが少し浮かんだりもして、まえから感じていたVJのもどかしさをいいカタチで解消して「なにか一緒に出来るかもしれない」と思い、その場で沼澤さんに提案させてもらったんです。

●なるほど。その後、ナカコーさんに話が来たのですか？

ナカコー：そうです。ボクに出演の話が来たのは、ちょうど『Entropy Vol.1』を作り終えたあとでしたね。「『Entropy Vol.1』のライブをオーディオビジュアルアクトの形式でやりませんか」、という相談をされたんです。

とはいえ、『Entropy Vol.1』で、ボクが手掛けた作業自体はすごく限られたものでしたので、｢これがオーディオビジュアルアクトの形式になるとどうなるんだろう？｣という面白さしかなかったですね。


沼澤：ボクもまったく同じですね。自分ができることって、ドラムを演奏する以外にないんですよ(笑)。ビジュアルにしてもサウンドにしても、｢自分がいちばん良くわかってないこと｣を｢わかっている｣ので、わかっている人に任せることにしています。

ボクのことを｢すごい！｣と思ってくれる人たちにいつも”引き出して”もらっているんですよね。
ですから、ヤマダくんから”fuZe Vol.2″出演の話をいただいたときも、｢ボクのドラムで何かやれることがあるならぜひお願いします｣というスタンスでした。

ヤマダ：そういう意味では、すごく自由にいろいろとやらせていただきました(笑)。

●ちなみに、ナカコーさんが『Entropy Vol.1』をプロデュースしようと思ったきっかけはなんだったんですか？

ナカコー：沼澤さんは、ボクにとって、何かを与えたらものすごく反応してくれる、とても興味深い観察対象なんですよ(笑)。

研究者が未知なるものに対して、何が起きるか分からない、または分かるけど想定外なことも起きるかもしれない、という反応を自分の目で観察したいという想いに似ていると思います(笑)。

さまざまな現場で、いろいろな人と即興で演奏を行うことも多いのですが、その誰かの音に反応して突然、沼澤さんが思いもよらない反応(演奏)をするんですよ。

そうした瞬間は、ふだんライブの流れのなかでしか訪れないのですが、それをどうにかして人工的に起こして、その現象を捉えて留めたいという思いで作ったのが、『Entropy Vol.1』なんです。


沼澤：いつもそうなのですが、自分自身は”駒”だと思っていて、誰かが作っているモノの”楽器のひとつ”として使ってもらっている、というイメージなんですね。作りたい曲のコンセプトに、ボクが必要であれば喜んで登場します、ということなんです。だから『Entropy Vol.1』の制作もナカコーに全部仕切ってもらいました。

リクエストとかもないです。もちろんライブでもそうです。目のまえにエースピッチャーがいるのに、ベンチのボクが自分で投げたいなんて言えませんよ(笑)。

ナカコー：そんな沼澤さんの反応によって生まれた美しい形を、何回も角度を変えてやることなく、１回でバチッとカタチになったものをCDとして収録したかったんですよ。

今回の”fuZe Vol.2″のパフォーマンスでも、そのような”現象”を上手に表現できたんじゃないでしょうかね(笑)。