音と映像を操るオーディオビジュアルアーティストの「今まで」と「これから」。

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プロフィール :

junichi akagawa
音と映像を扱うアーティスト。2010年から2013年までベルリンを拠点にヨーロッパのアートシーンにて活動、帰国後も中之条ビエンナーレへ映像作品出展や、現代音楽家大村久美子のオペラ作品”Dance of HAGOROMO”に能楽師の青木涼子、テノール歌手長谷川暁生ともに映像作家として参加し、カールスルーエのZKM及びハノーファMusik Zentrumで公演を行う。
近年はコンピュータによって生成される純粋なデジタルデータと自然の複雑さの混在に注目し、2012年には体の動きと音と映像の関係に焦点を当てたダンス作品”Figure”を演出家・ダンサー多田汐里とともに制作、発表する。 身体、映像、音を基調とした多田汐里/赤川純一のユニットは横浜ダンスコレクションEX2014にてイスラエル テルアビブ-ヤフォ・横浜文化交流賞を受賞。同年9月イスラエル、スザンヌデラールセンター デラールホールにて2日間満席の観客の中”Figure”を上演、また同年11月に中国・広州Guangdong Dance Festivalでも公演を行った。 音楽家としてはPROGRESSIVE FOrMのコンピレーションアルバム“Forma 3.10″へ参加、Hz-Recordsより2枚のEPのほか、国内外のレーベルからリリースを重ねる。聴覚と視覚を完全にリンクさせることによって、ただ聞いたり見るものではなく、体感する作品を制作している。
http://junichiakagawa.net/

山田秀人(ヤマダヒデト) Yamada Hideto
fuZeの発起人であり、メディアクリエイター。楽曲と同期したコンセプチュアルな映像表現で、過去に日本のファンクロックバンド"Theatre Brook"や、ダンスミュージックユニット"SUN PAULO"のライブビジュアルを手掛けるなど、ライブパフォーマンスとしてのビジュアルプロジェクションを行う。また、映像のみにとどまらず、ゲーム、WEB、アプリなどさまざまなメディアで活躍中。2013年12月に開催されたイベント"fuZe Vol.2"では、fuZeのために開発されたVJソフト"vjkit(powered by Unity)"でビジュアルパフォーマンスを行った。LiveALife inc.代表。
http://livealife.co.jp

2015.06.17


●映像制作についてですが、オーディオビジュアルパフォーマンス以外にもミュージックビデオなどの作品も手掛けていらっしゃいますね。

akagawa:MVはミュージシャンとしっかりコンセプトを打ち合わせしてから制作に入ります。自分のライブパフォーマンスよりもしっかりコンセプトを立てて作りますね。汲み取らないと行けない相手が自分ではないので

ヤマダ:自分の音に映像をつけていくのとはまた全然違う形になるんじゃないですか?

akagawa:「いつもこういうのを作っているけど、新しいのをやってみてよ」というリクエストだったりとか、逆に挑戦してくれるというか、そういったのに応えていくというのもありますし、相手がちょっと変なところにハードルを作ハードルを作ってくれて、それを越えていくというのもありますし。

ヤマダ:生みの苦しみなわけですね。人の作品だと自分の時ではしないようなことをやりますもんね。逆に型にはまらないカタチで、akagawaさんの魅力が出るのかもしれないですね。

akagawa:そこが面白いです。新しい引出しを開けてくれる、みたいな感じで。MVだったり、ダンサーの作品でもそうなんですが、他の人と一緒にやることで見えるもの、気付かせてもらえるものは大切にしていますね。



●自分がオーディオパフォーマンスをする時に心がけていることは何かありますか?

akagawa:自分1人でやっていることの意味というのを重要視しています。ミュージシャンとVJが別々にいて繰り広げるバトルのような駆け引きの面白さもあると思いますが、自分1人でそれをやっても多分面白くないんですよね。「1つのものとして見せたい」というのがあります。やっぱり、バーンと音が来たときに映像もパシッとハマってきてくれると、見ている、聞いているだけじゃなくて、「体感する」という方向に向かうと思うんです。どこまで体感させられるかというところを目指しています。音と映像が密接につながり合えるかだったりとか、どう1つにしてあげるかみたいなのをすごく意識しています。
_ARI0091_new2_505 ヤマダ:やっぱり単なるVJと違って、そこがオーディオビジュアルパフォーマンスの面白いところだと思うんですけど、ステージ場でどうパフォーマンスするかということが、音から映像が生まれているような、映像から音が生まれるような、自分1人でも駆け引きしているようなところが面白いですよね。

●ツールはいつも決まったものを使っているんですか?

akagawa:ミニコントローラーは「faderfox」(※7)というドイツのプロダクトを使っています。ダイアル型でデザインとかも若干ダサくていいんですよね(笑)。

ヤマダ:ルックスカッコいいな!と思って見ていました。アナログ感があっていいですね。「全部ダイアルだ!」と思って(笑)。

akagawa:使うツールは極力コンパクトにまとめようと思っています。「すぐ明日できる?」みたいなことに対応できるようなフットワークの軽さは常に意識しています。
_ARI0112_new2_505 ●fuZeのパフォーマンスはどうやっていたのですか?

akagawa:faderfoxでコントロールしながらopenFrameworks(以後OF)も使いました。あとGUI、コントローラー、あとキーボードとかも使ってコントロールしています。今のパラメーターを見やすくためにMaxで、GUIの集合体みたいなのをつくって、表示させてコントロールしました。やり方としてはMIDIコントローラーの情報を1回Maxで受けて、そのMax側でパラメーターをちょっと変えてあげたりとか、ちょっとトリートメントしてあげて、それをまたOSC(※8 OpenSoundControl)で今度はOFに渡すみたいな感じでやっていますね。音源はソフトウェア音源を使いました。

ヤマダ:たまに今でも見ますけど、あの時の映像、結構太い音も出ていてカッコ良かった。

●fuZeの会場だったWWWの環境はいかがでしたか?

akagawa:オーディオビジュアルをやる人間からすると、WWWという環境はめちゃめちゃいいですよね。

ヤマダ:最高ですよね。僕も最初見たときに、ここでオーディオビジュアルのイベントをやりたいと思ったんです。他にあそこまでのところはないですよね。もともと映画館というのが一番大きいですよね。

akagawa:もうこれはやばい(笑)。以前、オランダの映画館でVJをしたことがあるんですが、すごくスクリーンが大きいんですよね。WWWもそれと同じくらいだったのでテンションあがりました(笑)。

●今後はどんな活動をされていくんですか?

akagawa:Hz-recordsというレーベルから来年1月にソロアルバムを出すのと、ダンサーとの作品も来年3月に赤レンガ倉庫で発表するのでそれを成功させたいですね。今年1年は準備期間です。今年1年で作ったものを来年はじめに出していって、そこからまわしていこうかなと思っています。

ヤマダ:今年は密度の濃い年になりそうですね。

akagawa:そうですね。若干、水面下で(笑)。

ヤマダ:楽しみにしています。

※7 faderfox:ドイツ製のミニコントローラー www.faderfox.de
※8 OpenSoundControl:シンセサイザーなど電子楽器やコンピュータなどの機器において音楽演奏データをネットワーク上でリアルタイムに共有するための通信プロトコル。

KREI SALON(co-lab 西麻布)にて

写真: 有高唯之

INFORMATION :

■junichi akagawa 最新情報
2016年1月 Hz-recordsより1st full-length album リリース予定
2016年3月 横浜赤レンガ倉庫にて、ダンス作品の新作を発表予定
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